WEB 幽向け
1本、思いつきで書いたものの、投稿するのはやめました。
なんでって。
よかったら、読んでご判断下さい。
「せんちゃん」
宮間波
おとなりのせんちゃんが、泣きべそをかいてやって来た。
「ぼく、ぼく、おにになっちゃった」
今日のせんちゃんは、頭の上に風呂敷包みを被ったような、妙ちくりんな恰好だった。一体何をやってるんだ、と僕は驚き呆れたが、これもせんちゃんなりに思い悩んでのことだったらしい。
宥めすかしてわけを聞いてみると、
「おつむに、つの、はえちゃったんだよう」
と言って、しくしく泣く。
本当なら、確かに心配なことだ。せんちゃんもどうしていいか分からず、とりあえず僕に助けを求めて来たのだという。
「だ、大丈夫だよ、角が生えたからって鬼って決まったわけじゃないし。何か病気かもしれないし、治す方法もあるかもしれないし」
「でも、つのはえてるなんて、おににきまってるじゃないか」
慰めてもそう言って、なおも泣きじゃくる。
とにかくひとの居ないところで見せてみろ、ということで家に上げ、僕の部屋に連れてきた。
せんちゃんはしばらくもじもじしていたが、やがて風呂敷包みをといた。
「これは……」
僕は声を失った。
角は、せんちゃんのくりくり坊主頭のてっぺんに、二本並んで生えていた。
立派な、枝角が。
「どう、かな……?」
せんちゃんに、上目遣いで促されても、僕は何とも答えられなかった。頭を抱え、しばらく口をぱくぱくさせてから、ようやく言葉を絞り出した。
「うん……まあ……その、ちょっと、斬新、かな」
「ザンシン? てなに?」
「ええと、珍しくて――かっこいい、ていうか」
「か、かっこいいかな?」
正直言って「かっこいい」とは大分違うと思ったが、せんちゃんの顔がいくらか明るくなったので、いいことにした。
「あ。そうか、このつのみせて、おにのやくやればいいんだ。せつぶんの、ついなえで」
せんちゃんは、笑顔になって言った。
いやそれは。凄く違うだろう、色々と。
と、思ったけれども。もう僕には何も言えなかった。